中国版ゆとり教育「双減」その狙いは?再編される教育分野にDX化で対抗する事例も紹介

2021年11月1日

物流やビッグデータなど、多くの分野でDXが進む中国では、教育×ITのDXが進むことが予想されています。
教育分野にDXの波が押し寄せるのは、教育に対する子供・保護者の負担を減らそうとする「双減」政策によるものです。
「双減」政策とは何かを含め、政策が後押しするDXの具体例についてそれぞれ解説します。

1.中国の教育現場が抱える問題

中国では1979年から2014年までの間「一人っ子政策」が行われてきました。
増え続ける人口を抑制するために2人目以降、子を生むと罰金刑が課せられるものです。
一人っ子政策の結果、人口の抑制には効果がありましたが、今度は少子高齢化問題が深刻になり、2016年に一人っ子政策を完全撤廃、2021年は3人目の子供の出産を認めることとなりました。

しかし、一人っ子政策を撤廃しても人口は増加に転じませんでした。
その原因は家計の中で増大する「教育費」にありました。
一人っ子政策の結果、子供に対する親の期待が膨らみ受験戦争が激化、過剰ともいえる教育を施すことが一般化しました。
例えば、幼稚園教育では中国語と英語の両方を使う幼稚園が流行していました。
この幼稚園では一般的な保育スキルに加えて、英語を専門的に学ばせたり、留学経験がある保育士を雇用しています。
深センにある幼稚園の費用は年間300万円ほどにもなるといいます。
日本でインターナショナル幼稚園に通わせる場合、150~200万円ほどが相場であることを考えると教育費が高騰していることが容易に見て取れます。
幼稚園以降の、中等・高等教育でも同様に教育費の高騰が見られることから、2人の子供を育てる経済的な余裕はなく、政策撤廃後も少子化の流れは変わりませんでした。

過剰な教育による子供自身の負担、教育費に苦しむ親の負担、それぞれを軽減するための対策として、小中学生の学習時間減少を目的に作られたのが「双減」政策です。

2.中国版ゆとり教育「双減」

「双減」は中国が2021年7月に発表した政策です。
小中学生の宿題への負担軽減、塾の学習負担軽減を主な目的としています。さらに、長期的には家計の教育費負担を減じることで、2人目、3人目の子供が生まれ、少子高齢化に歯止めがかかることを期待しています。
具体的な宿題における時間的制限については、小学1~2年生は筆記式の宿題を禁止、小学3~6年生は平均1時間、中学生は学習時間を平均1時間半に設定しています。また、保護者による宿題のチェック禁止、就寝時間の厳守、芸術・読書・家事を奨励しています。
塾対象の規制はさらに厳しく、学習塾の新設不許可、既存の学習塾を非営利組織に再登記するよう指示をしています。
さらに週末・長期休暇の塾の禁止、就学前の児童英語教育禁止と、徹底した勉強量の減少を図っています。

政策施行の結果、深セン市の学校ではスポーツ活動が盛んになり、バスケットボールクラブの生徒数が30%増えた例など、学校学習以外の選択肢が増加しています。

参考:中華人民共和国中央人民政府サイト(中国語)
http://www.gov.cn/zhengce/2021-07/24/content_5627132.htm

3.教育とのDX化に活路を見出す起業も

課外活動を専門とする学習施設に子供が集まる一方で、塾などの学習施設は大打撃を受けています。
学習塾大手2社は2021年に株価が最高値を更新しましたが、双減政策施行後は一転して暴落しています。

一方で、プログラミング教育に力を入れている企業は業績を伸ばしています。
深センに籍を置く企業「点猫科技」は7歳から16歳向けに図形を用いて、直感的にPythonやC++などのプログラミングを学べるアプリの開発を行っています。
双減政策で業績を落とした企業がある一方で、教育×アプリのDXにより業績アップが見込まれる企業も存在します。

他にも深センで業績の拡大が見られる企業として「Makeblock」が挙げられます。
Makeblockでは、ロボットやドローンを電子ブロックで組み上げる「ハードウェア教育」・完成したロボットをプログラミングで動かす「プログラミング教育」・ハードウェアとプログラミングを勉強する「紙媒体」の3つの教育媒体を柱に事業を進めています。
ロボットをうまく動かすために試行錯誤することで論理的な思考力が身につくとされるMakeblockでは「STEM教育」を教育の中心に据えています。(STEM教育:Science(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Mathmatics(数学)の頭文字を取った造語。)IT技術に適応する人材を目指すMakeblockの考え方に共感する自治体・企業は多く、日本でも導入する事例が見られます。

参考:STEM教育先進企業Makeblock
https://japan.cnet.com/article/35138930/

4.まとめ

国の政策の大幅な転換により大打撃を被る企業がある一方で、IT技術とのDX化に活路を見出し、利益を上げる企業もあります。
双減政策は教育分野での一例でしたが、政策の転換による産業構造の大幅な変化は、電気自動車分野などでも同様に発生することが予想できます。
教育でも自動車分野でも、政策の決定スピードが速い中国の事例を日本が後追いすることは将来多くなることが予想されます。
多くの事例を研究することで、政策が転換される前に自社の舵を切ることができます。

IngDan Academyでは中国深センを中心にDX事例を豊富な映像資料とともにお伝えしています。
先進事例研究の第一歩を踏み出してはいかがでしょうか。

記事監修者
数年前、アジアのシリコンバレーと呼ばれる深センでは、日本企業が深セン企業を視察するブームが起こっていました。その時、私は同時通訳として、日本企業視察団の人たちと一緒に様々なスタートアップや起業事例に触れる機会に恵まれました。大手日系企業で働く中で、数々の企業の創新創業のパワーに感動して、深センに進出。現在は、IngDanアカデミー編集長として、深センを拠点に、中国パートナー企業の開拓・関係強化、調査やリサーチ、最新DX情報の発信を行っています。

聂 宏静(Nie Hongjing)
IngDanアカデミー編集長
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